韓国で、あまりにも痛ましい事故がありました。
いたたまれない気持ちになり
言葉にしなければと思いました。
命を預かり、守るということを
真剣に見直していくべきです。
新聞記事に若干誤字(変換違い)があります。
原文はこちらです。
セウォル号事故遺族の皆様へ
ニュースで、深い悲しみに沈んでいる皆様の様子を知りました。あまりに突然の悲しみと理不尽さに、自ら命を絶つ遺族もおられるという報道に、いたたまれず手紙を書いています。
私の国では、3年前の大津波で、たくさんの命が、木の葉のように流されて消えました。病気とも、戦争とも違います。何の前触れもない死です。
あの年は、毎週のように知人の葬儀があり、泣いて、落ち込んで、悔しがり、気がおかしくなりそうでした。今も、あの人はもういないんだと、ふと思い出し、何とも言えず胸が苦しくなります。何の疑問もなく続くと思っていた日常があの日から突然、目の前から消えました。
私の娘は学校で亡くなりました。石巻市立大川小学校の6年生、あと一週間で卒業式でした。学校の前の道路に、泥だらけになった小さな遺体が、次々に並べられていました。とても受け入れることなどできませんでした。今でもそうです。家にいると、娘の「ただいま」が聞こえそうな気がしてなりません。
我が子の名前を呼びながら、海に向かって泣き崩れる方々の映像を見て、とても他人事とは思えませんでした。こんな形で、家族を残して遠くに旅立たなければならないなんて…。怖かったでしょう、冷たかったでしょう、どんなに生きたかったことでしょう。
セウォル号では、危機に対する備えが不十分であったと聞きます。人の命を預かるはずの組織が、命を最優先にしていなかったということです。「命」よりも他のものを優先し、今日もどうせ大丈夫、少しぐらいならいいだろうという積み重ねが、船長をはじめとした乗組員の行動にも表れています。避難マニュアルも、救命ボートも、命を守るためのものではありませんでした。
大川小学校の災害への備えや避難マニュアルも実体のない、杜撰なものであったことが分かっています。そして、保護者や子どもたちが避難を訴えていたにもかかわらず、50分間校庭で動くことはありませんでした。
私は教員です。学校管理下で子どもを亡くした私の職場は、学校です。子どもたちは逃げたくても先生の指示を待っていました。先生の一言で、全員が助かっていたでしょう。体験したことのない揺れの後、大津波警報が鳴り響いていたあの状況で「逃げろ!」と、なぜ強く言えなかったのか、私はいつも自問しています。
セウォル号の事故で、未だに大川小学校での事故が教訓にもなっていないことが分かりました。3年以上も前の事故を通して、命を預かることの意味が見直されていれば、今回のような事故は防げたかもしれないとさえ思います。船でも列車でも、災害でも、当たり前のことをしていれば、守られるはずの命が失われる事故・事件はけっしてあってはなりません。真に大切なことを、最優先に見つめ、語れる社会にしていかなければと強く思います。
命とはなんとはかないものでしょう。地球がちょっと身震いしただけで破れてしまう薄い紙のようです。一方で、どんな大津波でも流されないものは、心だということを知りました。どんな状況にあっても人は希望を見つけ出せることを知りました。
瓦礫だらけだった町が少しずつ息を吹き返しています。心が折れなければ、希望を持ち続ければ、やがて光は見えてきます。茎が光を目指して伸びていくように。たとえゆっくりでも、たとえ一人でも、それに向かって進めばいいのだと思います。
あの子たちの犠牲が無駄になるかどうか、それが問われているのは生きている私たちです。小さな命たちを未来のために意味のあるものにしたい、それが、三年かかってようやく見つけた私にとってのかすかな光です。
他の国の見知らぬ者が、勝手なことを述べて、嫌な想いをされたのであれば申し訳ありません。関係ないだろう、と言われれば、たしかにそうです。でも、少なくとも私は、こうして書かずにはいられませんでした。皆さんとは、何らかの形で手を携えていけたらとも思っています。
もうすぐ娘の誕生日です。誕生日、お正月、クリスマス…、楽しい思い出の日が今年も巡ってきます。その度、胸を締め付けるこの悲しみは、娘の存在そのものです。だから、無理して乗り越えなくてもいいんだと、最近ようやく気づきました。この悲しみとともに私は残りの人生を歩んでいきたいと思っています。
時折、夢に出てくる娘はいつも笑顔です。
どうぞご自愛ください。
小さな命の意味を考える会 佐藤 敏郎
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