ノンフィクション作家の神山のりおさんからメッセージが届きました。
神山さんは何度も大川小学校を訪れ、裁判の傍聴も続けています。
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小さな生命の意味を考えながら、
何度か大川小学校の被災跡地に通い、
裁判の傍聴も続けています。
誰もが生命の大切さを思っているはずなのに、
どうも大人たちは大切なものに対して素直になれないんですね。
目を伏せてしまっている。
ぼくは今年、ある事件と遭遇して、全く同じ経験をしました。
この社会はぼくたち大人がつくり、子どもたちにその将来を託しているはずなのに、
大人たちが自分の足で立っていない。
自分の言葉で喋れない。
姿の見えないものに怯えてしまっている。
ぼくが追ってきた事件が明るみになるきっかけは、
13歳の少女が発したひと言でした。
「大人は嘘つきだ---」
その言葉から、クラシック界で18年間も続いた巨大な虚構が脆くも崩れていったのです。
大川小学校のことも同じ構造だと思います。
あの日、校庭で起きてしまったことは、もう取り返しはつきません。
でも、あそこで何故あんな悲劇が起きてしまったのかは、
大人たちが勇気を振り絞って、正直に語り始めないといけません。
あの日小学生だった子どもたちも、もう中学生となり、まもなく「大人」と言われる年代になります。
その時、「大人は黙っていればいいんだ」という人にしていいのでしょうか?
「この社会は真実を語るよりも黙っていたほうがいいんだ」という処世術を身につけさせてしまっていいのでしょうか?
ぼくらはそんな子どもたちをつくるために必死に子育てをしているのか。
そんな社会をつくるために生きているのか。
あの震災以後寄せられた、全国全世界からの支援に対して、
石巻の人は、いや、そんな社会を無自覚のうちにつくってしまっているぼくらは、恥ずかしくないのでしょうか。
裁判では、生き残った先生の証人尋問も争点の一つになっています。
ぼくは思います。
生き残ったことは素晴しい。自分の判断で生命を守ったことは素晴しい。
ぜひその生き方を、これからの子どもたちに伝えてほしい。
これからの石巻を、東北を、日本を、世界をつくっていく子どもたちに、
自分の足でしっかりと立っていくことを伝えてほしい。
亡くなった子どもたちに愛された先生なのだから。
語る資格がある先生なのだから。
有らん限りの勇気を振り絞って、ぜひ語り始めてください。
小さな呟きでもいい。その呟きを大切にしながら、少しずつ声をあわせて、
子どもたちに恥ずかしくない社会をつくりましょう。
雀鬼、桜井章一はいいます。
「心に一人の少年をおけ」と。
何か迷うことがあったら、その少年に聞け、と。
あなたの少年は、なんと言っていますか。
耳を澄ませて、心を澄ませて、その声を聞いてみませんか。
小さな呟きから社会が変わっていくことを、ぼくは信じたいと思っています。
ノンフィクション作家、神山典士 ホームページ
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